草の根プロジェクト
2025.09.04
京都駅東南部エリア活性化方針推進に向けた京都市への提案
9月3日、新聞報道もされましたが、東九条の住民有志の皆さんによる東九条まちづくり連絡会が、京都市に市民提言を提出されました。
本当に素晴らしい内容です。
京都市の各地で現在進行形で進む再開発ですが、ぜひともこの提言を参考に幅広い市民参加のもとで進めるべきです。
市民の宝になり得るこの提言、連絡会の許可をいただいて全文をシェアします。
長いですがぜひ、全文をご一読ください。
⇩
市民提言
京都駅東南部エリア活性化方針推進に向けた京都市への提案
2025 年 9 月 2 日
提案1 このまちに生活する住民の居住権を守るため新たな施策に着手する提案
提案2 マンモス団地跡地を核とする京都型「新しい公共」づくりの提案
提案3 東九条の歴史が受け継がれるまちをともにつくるための提案
趣旨説明
わたしたち、東九条まちづくり連絡会(以下、「連絡会」と略記)は、地域住民だけでなく、芸術家やアート関係者を含む地域に関わる人たち、京都市南区東九条の歴史や地域性に惹かれた人たち、東九条の将来への可能性を信じる多くの人たちが参加するネットワークです。 地域の自治連合会とも情報共有をおこない交流しています。
連絡会は、<芸術のまち>をめぐる議論をおこないながら、<芸術と地域(生活空間)>や<芸術と人>の結びつきによる新しい都市モデルを模索しています。それは、既存の価値基準に依拠しない、オルタナティブな人間の生き方を模索する挑戦でもあります。
ここでまず、京都市が約 50 年前に世界に向けて高らかに誓った「世界文化自由都市宣言」を、振り返っておきたいと思います。
都市は,理想を必要とする。その理想が世界の現状の正しい認識と自己の伝統の深い省察の上に立
ち,市民がその実現に努力するならば,その都市は世界史に大きな役割を果たすであろう。われわれは,ここにわが京都を世界文化自由都市と宣言する。
世界文化自由都市とは,全世界のひとびとが,人種,宗教,社会体制の相違を超えて,平和のうちに,ここに自由につどい,自由な文化交流を行う都市をいうのである。
京都は,古い文化遺産と美しい自然景観を保持してきた千年の都であるが,今日においては,ただ過去の栄光のみを誇り,孤立して生きるべきではない。広く世界と文化的に交わることによって,優れた文化を創造し続ける永久に新しい文化都市でなければならない。われわれは,京都を世界文化交流の中心にすえるべきである。もとより,理想の宣言はやさしく,その実行はむずかしい。われわれ市民は,ここに高い理想に向かって進み出ることを静かに決意して,これを誓うものである。
[世界文化自由都市宣言 京都市
全文/京都市会の議決を得て 1978 年 10 月 15 日宣言]
今日でも意義深い洞察に満ちたこの宣言が誓われた同時代、東九条地域には生存権に関わる居住環境問題や地域差別の問題が色濃く存在していました。
そのような環境の中にあっても、人として気高く、たくましく、生活の場を築き、自らに負った様々な背景に、時には抗い苦しみ葛藤しながらも、東九条の人々はそれぞれの立場から自分たちの生活文化を創造し根付かせ紡いできました。また、東九条地域は都市に流入する様々な背景をもつ人々を受け止める場所でもありました。様々な人が、立場や価値観の違いからぶつかりあうこともあり、互いの多様性を認め合うこともあった、そうした地域の「包容力」は、住民主体のまちづくりを進める地域資源(ポテンシャル)になり、多文化共生の地域コミュニティを形成してきました。
地域の歴史が培った文化創造の実践に後押しされて、連絡会は活動しています。
1999 年に策定された「京都市基本構想」は、市民主体・市民参加のまちづくりを京都市政の基盤としました。
それを土台に、京都市は文化芸術を基軸としたまちづくりの指針として 2007 年に「文化芸術都市創生計画」を打ち立て、現在第 2 期計画が進行中です。
2017 年に策定された「京都駅東南部エリア活性化方針」でも
「文化芸術」と「若者」が活性化の基軸とされました。
しかしながら、京都駅東南部エリア活性化方針が策定されてからの施策、とりわけチームラボへの市有地貸与にはじまる市有地の利活用は、京都市基本構想が掲げる「市民がつくる京都のまち」の姿とは程遠い手法でおこなわれたと言わざるを得ません。さらに、今年 3 月に発表された「新京都戦略」は、2050 年を展望する長期ビジョンに向けたリーディング·プロジェクトとされていますが、そこには地域に生きる人間としての「市民」の視点が欠けているように感じます。
連絡会では、地域で活動する諸団体·個人と連携しながら、今年 4 月~7 月までの 4 回にわたり独自のタウンミーティングを行い、「わたしたちが望むまちの姿」を話し合いました。その途中経過として、京都駅東南部エリア活性化方針推進のための「市民提言」を京都市長に提出します。合わせて、わたしたちのタウンミーティングで出された意見をそのまま添付します。
提案 1
「このまちに生活する住民の居住権を守るため新たな施策に着手する提案」
ご承知のとおり、いま東九条では急激な地価高騰が起きています。これまで地価が抑えられていた地域の背景もありますが、民有地売買の市場拡大と連動して、市有地は想定額より高額で売却され、家賃や固定資産税も上昇しています。隣の崇仁地域でも同じく地価が高騰するなか、大手資本が市有地を買い取る動きが顕著です。京都市は、京都駅東南部エリア、京都駅東部エリアそれぞれで住環境を整備し、住民生活を守る方針を明確にしているかと思いますが、2021 年に都市計画マスタープランを見直し、都市計画を大胆に変更させて以降、再開発のスピードは一段と速まっています。これにより土地売買の圧力は強まり、宅地を売買する不
動産業者の営業活動も目立っています。今のままでは、このまちに住んでいた者が追い出され、これまでより高い賃料を払える者が移り住み、住民層が一変するのではないかと危惧しています。これは、町内会の存立にも関わる重大な事態です。京都市は住民の居住権を守る施策·対策を一刻も早く打ち出すべきです。
連絡会は、対策のひとつとして家賃規制の導入を早急に検討することを提案します。土地·不動産市場に一定の歯止めをかけ、このまちに生活する住民の居住権を守る施策が必要です。家賃規制のほかにも、公営住宅の建設、社会住宅の建設、住居費への支援、宿泊施設建設(新規申請)の規制など、複合的な施策を検討するよう求めます。複合的な住宅施策の検討にあたって、連絡会に協力いただいた学識有識者の専門意見を別紙として提出します。東九条のみならず京都市全域、さらに国としても検討されるべき内容です。
加えて、アーティストが住みやすい住宅の建設も視野に含めることを提案します。この地域には、1993 年から続く「東九条マダン」の歴史があります。多様なものを受け入れ、ともに育んでいく地域性が培われ、その文化に関心をもち、実にたくさんの人たちが東九条マダンに参加してきました。これは、東九条地域に特有の芸術·文化です。また、2017 年から 5 年間実施された京都市の機運醸成事業、小劇場開設やアーティスト支援団体の事務所開設、京都市立芸術大学の崇仁地域への移転など、アーティストの活動が顕著です。
連絡会はこれらアーティストと年月をかけて一緒に活動したり将来のまちについて議論したりしてきました。
創作の場と生活の場を同じくするアーティストの生活様式や生活空間は、日常生活を送ることを基準にした一般住宅では不便があります。創作活動は時に、音や物の保管·移動など、居住空間を超えて他者に影響を与えるからです。これまで連絡会は、東九条マダンの練習もできる防音設備のある公共施設を京都市に
求めてきました。地域を訪れ交流するアーティストが増え続けているいま、この地域で活動し続けたいと思ったアーティストが、活動しやすく住みやすい住宅が必要です。
提案 2
「マンモス団地跡地を核とする京都型「新しい公共」づくりの提案」
連絡会は、本エリアに新たに居を構える事業者を、地域でともに生きていく一員として迎え入れ、「共存·共生する道」を模索していきたいと考えています。ただ、懸念するのは、チームラボ開業後のまちの変化を地域住民はじめ誰もが経験していないことです。今後も、有限会社カイカイキキ制作スタジオの開設、止むことのないホテルやマンション等の民間開発が続くなか、地域住民はここで生活し続けられるかどうかの見通しをもてず大きな不安を感じています。南岩本公園の本格開業も控えるなか、これ以上の市有地の開発を同時期に行わないことを提案します。
そこで注目しているのが、北河原市営住宅(通称マンモス団地)跡地です。この場所を、再開発の市場の時間軸から切り離し、新京都戦略が示す「新しい公共(ニューパブリックコモンズ)」の実現に向けた実験場所、実践場所とすることを提案します。同時に、居住人口が減るかわりに、観光客や宿泊人口の激増が予想される東九条地域(特に山王学区)のなかに、自然災害やパンデミックへの対策ができる新しい公共空間を創出する ことを提案します。
例えば、以下のような機能をもつ公共空間の整備を、京都市とともに進めていきたいと考えます。
<タウンミーティングで出た意見>
・災害時の避難場所としての機能を持たせる。
居住人口よりも、はるかに多くの宿泊人口を抱える東九条地域(山王学区)。閉校後の小学校だけでは担えない防災機能。いざという時の避難場所。福祉避難所の機能。
既存の事業所、新たに進出する事業所も含めて防災に努める。
・都市の中の「ひろば」機能を持たせる。
空き地の中に畑をつくる。空き地を耕す。都市を耕す。
誰もが参加でき、誰もが収穫物を共有できる。(大きな大きな居場所の創造)公共空間をまちに開く。パブリック「テラス」機能と、東九条地域に根づく「マダン」の機能。
地域の物産店。単一の目的に収まらない「ひろば」づくりの模索。
・学びの場(実践の場)の機能を持たせる
地域の歴史の記憶と継承の場を設置。こどもたちの「ものづくり」の場。自然環境の保全。道路·高瀬川·公園整備のなかで消失した自然環境の再生。
仮に 5 年間などと期間を定めて、新京都戦略のチャレンジングな試みとして、上記のような公共空間を創出することを提案します。
提案 3
「 東九条の歴史が受け継がれるまちをともにつくるための提案」
近年、国内外を問わず東九条を訪れる芸術家や研究者が増えています。この人たちが東九条に心を寄せる大きな理由は、東九条の歴史にあります。戦前·戦中·戦後から現在に至るまで、東九条で生きてきた人々の生活、その背景、国家に翻弄されながらも故郷を離れた人々、東九条に流れ着いた人々とコミュニティを形成し、共生してきた人々の生きた歴史にあります。その歴史の大切さを理解しているから、東九条を感じ、触れ、学びにくるのだと思います。同じように、京都を訪れる多くの人たちは、千年続く京都の歴史と文化を愛しています。京都が博物館の標本としてではなく、今もなお魅力あるまちであり続ける理由は、目先の利益や利便性だけに捉われず、多くの大学や寺社仏閣が過去と遠い未来を見据え、人類の知を継承し、生きることの意味を受け継いできたか
らに他ならないでしょう。
東九条地域は、多様な形態の“なりわい”が生活空間と密接する地域であり、また、東九条マダンの楽器練習に代表されるように、地域に根づく文化の「音」や「もの」を日常的に感じることのできる地域です。そして、多様な背景を持つ人々、国籍や民族やルーツが異なったり、心や身体に病があったり、障害がある人々が当
たり前にそこに暮らしているまちです。それは、「ちょっと変わっている」と思われがちな個性あるアーティストにとっても暮らしやすいまちと言えるのではないでしょうか。
そんなまちこそ、誰もが暮らしやすい、すべての市民にとっても暮らしやすい場所ではないでしょうか。
在日韓国·朝鮮人の歴史、被差別部落の歴史、障害者差別の歴史、貧困者差別の歴史(スラムの歴史)は、現代社会においては「負の歴史」と捉えられがちです。そうした歴史を見えないものにする、消すのではなく、しっかりと受け止め、ともに生きる歩みへと進めることこそが歴史の継承といえます。
現在、世界は「分断の時代」などと言われていますが、他者を攻撃することで自己の地位を守ろうとする社会風潮や政治主張が
蔓延しているように思えます。そのような風潮のなかで進められる再開発は、ともすれば歴史や文化の断絶を招き、社会の分断を招きかねません。
連絡会は、東九条で紡がれてきた人々の暮らし、生活文化、歴史が受け継がれるように、このまちを発展させていきたいと願っています。そんな「幅広い多文化共生」の息づくまちを、地域住民と事業者、そして京都市とともに模索しながら、ともに実現させていくことを提案します。
次の百年、千年を見据えた京都の未来像をともに考えるためにも、東九条に限らず、京都のよさ、世界文化自由都市宣言を高らかに宣言した京都の誇りを投げ出すような目先の再開発に翻弄されていてはなりません。
京都市が、「多様な主体と対話を重ねる場」を積極的に設け、「幅広い多文化共生」のまちづくりをめざす施策を明確にされるよう提案します。
最後に、本提案書を多くの京都市職員の閲覧にも供していただくことを強く希望するとともに、京都市長と意見交換する機会を切望していることを申し添え、以上を提言します。
東九条まちづくり連絡会
9月3日、新聞報道もされましたが、東九条の住民有志の皆さんによる東九条まちづくり連絡会が、京都市に市民提言を提出されました。
本当に素晴らしい内容です。
京都市の各地で現在進行形で進む再開発ですが、ぜひともこの提言を参考に幅広い市民参加のもとで進めるべきです。
市民の宝になり得るこの提言、連絡会の許可をいただいて全文をシェアします。
長いですがぜひ、全文をご一読ください。
⇩
市民提言
京都駅東南部エリア活性化方針推進に向けた京都市への提案
2025 年 9 月 2 日
提案1 このまちに生活する住民の居住権を守るため新たな施策に着手する提案
提案2 マンモス団地跡地を核とする京都型「新しい公共」づくりの提案
提案3 東九条の歴史が受け継がれるまちをともにつくるための提案
趣旨説明
わたしたち、東九条まちづくり連絡会(以下、「連絡会」と略記)は、地域住民だけでなく、芸術家やアート関係者を含む地域に関わる人たち、京都市南区東九条の歴史や地域性に惹かれた人たち、東九条の将来への可能性を信じる多くの人たちが参加するネットワークです。 地域の自治連合会とも情報共有をおこない交流しています。
連絡会は、<芸術のまち>をめぐる議論をおこないながら、<芸術と地域(生活空間)>や<芸術と人>の結びつきによる新しい都市モデルを模索しています。それは、既存の価値基準に依拠しない、オルタナティブな人間の生き方を模索する挑戦でもあります。
ここでまず、京都市が約 50 年前に世界に向けて高らかに誓った「世界文化自由都市宣言」を、振り返っておきたいと思います。
都市は,理想を必要とする。その理想が世界の現状の正しい認識と自己の伝統の深い省察の上に立
ち,市民がその実現に努力するならば,その都市は世界史に大きな役割を果たすであろう。われわれは,ここにわが京都を世界文化自由都市と宣言する。
世界文化自由都市とは,全世界のひとびとが,人種,宗教,社会体制の相違を超えて,平和のうちに,ここに自由につどい,自由な文化交流を行う都市をいうのである。
京都は,古い文化遺産と美しい自然景観を保持してきた千年の都であるが,今日においては,ただ過去の栄光のみを誇り,孤立して生きるべきではない。広く世界と文化的に交わることによって,優れた文化を創造し続ける永久に新しい文化都市でなければならない。われわれは,京都を世界文化交流の中心にすえるべきである。もとより,理想の宣言はやさしく,その実行はむずかしい。われわれ市民は,ここに高い理想に向かって進み出ることを静かに決意して,これを誓うものである。
[世界文化自由都市宣言 京都市
全文/京都市会の議決を得て 1978 年 10 月 15 日宣言]
今日でも意義深い洞察に満ちたこの宣言が誓われた同時代、東九条地域には生存権に関わる居住環境問題や地域差別の問題が色濃く存在していました。
そのような環境の中にあっても、人として気高く、たくましく、生活の場を築き、自らに負った様々な背景に、時には抗い苦しみ葛藤しながらも、東九条の人々はそれぞれの立場から自分たちの生活文化を創造し根付かせ紡いできました。また、東九条地域は都市に流入する様々な背景をもつ人々を受け止める場所でもありました。様々な人が、立場や価値観の違いからぶつかりあうこともあり、互いの多様性を認め合うこともあった、そうした地域の「包容力」は、住民主体のまちづくりを進める地域資源(ポテンシャル)になり、多文化共生の地域コミュニティを形成してきました。
地域の歴史が培った文化創造の実践に後押しされて、連絡会は活動しています。
1999 年に策定された「京都市基本構想」は、市民主体・市民参加のまちづくりを京都市政の基盤としました。
それを土台に、京都市は文化芸術を基軸としたまちづくりの指針として 2007 年に「文化芸術都市創生計画」を打ち立て、現在第 2 期計画が進行中です。
2017 年に策定された「京都駅東南部エリア活性化方針」でも
「文化芸術」と「若者」が活性化の基軸とされました。
しかしながら、京都駅東南部エリア活性化方針が策定されてからの施策、とりわけチームラボへの市有地貸与にはじまる市有地の利活用は、京都市基本構想が掲げる「市民がつくる京都のまち」の姿とは程遠い手法でおこなわれたと言わざるを得ません。さらに、今年 3 月に発表された「新京都戦略」は、2050 年を展望する長期ビジョンに向けたリーディング·プロジェクトとされていますが、そこには地域に生きる人間としての「市民」の視点が欠けているように感じます。
連絡会では、地域で活動する諸団体·個人と連携しながら、今年 4 月~7 月までの 4 回にわたり独自のタウンミーティングを行い、「わたしたちが望むまちの姿」を話し合いました。その途中経過として、京都駅東南部エリア活性化方針推進のための「市民提言」を京都市長に提出します。合わせて、わたしたちのタウンミーティングで出された意見をそのまま添付します。
「このまちに生活する住民の居住権を守るため新たな施策に着手する提案」
ご承知のとおり、いま東九条では急激な地価高騰が起きています。これまで地価が抑えられていた地域の背景もありますが、民有地売買の市場拡大と連動して、市有地は想定額より高額で売却され、家賃や固定資産税も上昇しています。隣の崇仁地域でも同じく地価が高騰するなか、大手資本が市有地を買い取る動きが顕著です。京都市は、京都駅東南部エリア、京都駅東部エリアそれぞれで住環境を整備し、住民生活を守る方針を明確にしているかと思いますが、2021 年に都市計画マスタープランを見直し、都市計画を大胆に変更させて以降、再開発のスピードは一段と速まっています。これにより土地売買の圧力は強まり、宅地を売買する不
動産業者の営業活動も目立っています。今のままでは、このまちに住んでいた者が追い出され、これまでより高い賃料を払える者が移り住み、住民層が一変するのではないかと危惧しています。これは、町内会の存立にも関わる重大な事態です。京都市は住民の居住権を守る施策·対策を一刻も早く打ち出すべきです。
連絡会は、対策のひとつとして家賃規制の導入を早急に検討することを提案します。土地·不動産市場に一定の歯止めをかけ、このまちに生活する住民の居住権を守る施策が必要です。家賃規制のほかにも、公営住宅の建設、社会住宅の建設、住居費への支援、宿泊施設建設(新規申請)の規制など、複合的な施策を検討するよう求めます。複合的な住宅施策の検討にあたって、連絡会に協力いただいた学識有識者の専門意見を別紙として提出します。東九条のみならず京都市全域、さらに国としても検討されるべき内容です。
加えて、アーティストが住みやすい住宅の建設も視野に含めることを提案します。この地域には、1993 年から続く「東九条マダン」の歴史があります。多様なものを受け入れ、ともに育んでいく地域性が培われ、その文化に関心をもち、実にたくさんの人たちが東九条マダンに参加してきました。これは、東九条地域に特有の芸術·文化です。また、2017 年から 5 年間実施された京都市の機運醸成事業、小劇場開設やアーティスト支援団体の事務所開設、京都市立芸術大学の崇仁地域への移転など、アーティストの活動が顕著です。
連絡会はこれらアーティストと年月をかけて一緒に活動したり将来のまちについて議論したりしてきました。
創作の場と生活の場を同じくするアーティストの生活様式や生活空間は、日常生活を送ることを基準にした一般住宅では不便があります。創作活動は時に、音や物の保管·移動など、居住空間を超えて他者に影響を与えるからです。これまで連絡会は、東九条マダンの練習もできる防音設備のある公共施設を京都市に
求めてきました。地域を訪れ交流するアーティストが増え続けているいま、この地域で活動し続けたいと思ったアーティストが、活動しやすく住みやすい住宅が必要です。
「マンモス団地跡地を核とする京都型「新しい公共」づくりの提案」
連絡会は、本エリアに新たに居を構える事業者を、地域でともに生きていく一員として迎え入れ、「共存·共生する道」を模索していきたいと考えています。ただ、懸念するのは、チームラボ開業後のまちの変化を地域住民はじめ誰もが経験していないことです。今後も、有限会社カイカイキキ制作スタジオの開設、止むことのないホテルやマンション等の民間開発が続くなか、地域住民はここで生活し続けられるかどうかの見通しをもてず大きな不安を感じています。南岩本公園の本格開業も控えるなか、これ以上の市有地の開発を同時期に行わないことを提案します。
そこで注目しているのが、北河原市営住宅(通称マンモス団地)跡地です。この場所を、再開発の市場の時間軸から切り離し、新京都戦略が示す「新しい公共(ニューパブリックコモンズ)」の実現に向けた実験場所、実践場所とすることを提案します。同時に、居住人口が減るかわりに、観光客や宿泊人口の激増が予想される東九条地域(特に山王学区)のなかに、自然災害やパンデミックへの対策ができる新しい公共空間を創出する ことを提案します。
例えば、以下のような機能をもつ公共空間の整備を、京都市とともに進めていきたいと考えます。
<タウンミーティングで出た意見>
・災害時の避難場所としての機能を持たせる。
居住人口よりも、はるかに多くの宿泊人口を抱える東九条地域(山王学区)。閉校後の小学校だけでは担えない防災機能。いざという時の避難場所。福祉避難所の機能。
既存の事業所、新たに進出する事業所も含めて防災に努める。
・都市の中の「ひろば」機能を持たせる。
空き地の中に畑をつくる。空き地を耕す。都市を耕す。
誰もが参加でき、誰もが収穫物を共有できる。(大きな大きな居場所の創造)公共空間をまちに開く。パブリック「テラス」機能と、東九条地域に根づく「マダン」の機能。
地域の物産店。単一の目的に収まらない「ひろば」づくりの模索。
・学びの場(実践の場)の機能を持たせる
地域の歴史の記憶と継承の場を設置。こどもたちの「ものづくり」の場。自然環境の保全。道路·高瀬川·公園整備のなかで消失した自然環境の再生。
仮に 5 年間などと期間を定めて、新京都戦略のチャレンジングな試みとして、上記のような公共空間を創出することを提案します。
「 東九条の歴史が受け継がれるまちをともにつくるための提案」
近年、国内外を問わず東九条を訪れる芸術家や研究者が増えています。この人たちが東九条に心を寄せる大きな理由は、東九条の歴史にあります。戦前·戦中·戦後から現在に至るまで、東九条で生きてきた人々の生活、その背景、国家に翻弄されながらも故郷を離れた人々、東九条に流れ着いた人々とコミュニティを形成し、共生してきた人々の生きた歴史にあります。その歴史の大切さを理解しているから、東九条を感じ、触れ、学びにくるのだと思います。同じように、京都を訪れる多くの人たちは、千年続く京都の歴史と文化を愛しています。京都が博物館の標本としてではなく、今もなお魅力あるまちであり続ける理由は、目先の利益や利便性だけに捉われず、多くの大学や寺社仏閣が過去と遠い未来を見据え、人類の知を継承し、生きることの意味を受け継いできたか
らに他ならないでしょう。
東九条地域は、多様な形態の“なりわい”が生活空間と密接する地域であり、また、東九条マダンの楽器練習に代表されるように、地域に根づく文化の「音」や「もの」を日常的に感じることのできる地域です。そして、多様な背景を持つ人々、国籍や民族やルーツが異なったり、心や身体に病があったり、障害がある人々が当
たり前にそこに暮らしているまちです。それは、「ちょっと変わっている」と思われがちな個性あるアーティストにとっても暮らしやすいまちと言えるのではないでしょうか。
そんなまちこそ、誰もが暮らしやすい、すべての市民にとっても暮らしやすい場所ではないでしょうか。
在日韓国·朝鮮人の歴史、被差別部落の歴史、障害者差別の歴史、貧困者差別の歴史(スラムの歴史)は、現代社会においては「負の歴史」と捉えられがちです。そうした歴史を見えないものにする、消すのではなく、しっかりと受け止め、ともに生きる歩みへと進めることこそが歴史の継承といえます。
現在、世界は「分断の時代」などと言われていますが、他者を攻撃することで自己の地位を守ろうとする社会風潮や政治主張が
蔓延しているように思えます。そのような風潮のなかで進められる再開発は、ともすれば歴史や文化の断絶を招き、社会の分断を招きかねません。
連絡会は、東九条で紡がれてきた人々の暮らし、生活文化、歴史が受け継がれるように、このまちを発展させていきたいと願っています。そんな「幅広い多文化共生」の息づくまちを、地域住民と事業者、そして京都市とともに模索しながら、ともに実現させていくことを提案します。
次の百年、千年を見据えた京都の未来像をともに考えるためにも、東九条に限らず、京都のよさ、世界文化自由都市宣言を高らかに宣言した京都の誇りを投げ出すような目先の再開発に翻弄されていてはなりません。
京都市が、「多様な主体と対話を重ねる場」を積極的に設け、「幅広い多文化共生」のまちづくりをめざす施策を明確にされるよう提案します。
最後に、本提案書を多くの京都市職員の閲覧にも供していただくことを強く希望するとともに、京都市長と意見交換する機会を切望していることを申し添え、以上を提言します。
東九条まちづくり連絡会