議 会

2025.04.22

環境権と予防原則

【聖護院門跡前のマンション建設の建築確認の取り消しを求める建築審査会公開口頭審査について】

会場でお会いした富樫議員の投稿をシェアさせていただきつつ、翌日のシンポジウムの報告も兼ねます。

建築審査会公開口頭審査では、聖護院・黒谷の景観を守る会から聖護院問跡門主の宮城泰年さん、建設予定地の隣地の方、地元の町内会長さんをされてきた方、お三方の訴えは胸に迫ってくるものがありました。
法はなんのためにあるのか。
松ヶ崎で、聖護院門跡前で、仁和寺前で、そして京都駅の南部エリアで、同時に起こっている開発に対する地元の皆さんの声。
「開発するな」とはおっしゃっていないのです。
開発をする際に地元の暮らしに配慮をするよう、そして大切に守ってきた景観に配慮するよう求められている。
都市計画の法律ができるずっと前から培ってこられた地元の皆さんの暮らし、大切に守ってこられた景観に対し、法を盾に価値がないものとするような開発のあり方について、なんとか地元の思いを届け計画修正をと、ずっと対話を求めてらおられる。

審査会翌日に開催されたシンポジウムで大阪市立大学名誉教授の宮本憲一さんのお話を伺いました。
何が問題か、とてもわかりやすくまとめてくださったので要約メモを添付します。
『1985年、イタリアで世界で初めての景観保全法(ガラッソ法)が制定され、開発によって失われた市税景観の回復と景観保全のために広域の土地利用規制をするもの。
これは景観権を人権として求めた画期的なもの。
この流れを受け、日本でも2004年に景観法が制定され、具体的施策は地方に委ねられ、京都市は2007年、景観条例を制定した。
地区に応じて景観を指定し、建物の高さを中心部の31メートルの高さ基準以外は15メートルとし、デザインを検討し、広告規制を施した。
「50年後、100年後も光り輝く京都を目指して」と謳われたこの条例に対し、2024年3月、都市計画審議会は人口減少対策として一部地域の高さ規制の緩和を認めた。
今、京都駅前の中央郵便局が60メートルの高さの建物への建て替えを、そして三条京阪に京阪ホールディングスが計画する複合施設は25mを予定している。
2022年、国連総会は「正常でかつ持続可能な環境を享受する権利を人権として認める」という画期的な環境決議を161カ国の賛成で採択した。日本も賛成をしたが法制化はまだされていない。
1993年、日本は公害基本公を廃止し、環境基本法を制定したが、この中に「環境権」の制定がされなかった。

環境権と予防原則の確立が必要。
そうすることで景観権も人権として確立する。』
環境権と予防原則、この法整備がない中で地元の声が届かない開発問題が起き、そしてPFASなどの新しい公害に対しても「予防原則」がなされない状態になっているのだと、気付かされます。
公害問題についても、問題が起きてからの対処に回ってしまう。

今各地で声をあげておられる住民の皆さんの活動は広く環境問題、そして人権の確立に不可欠なもので、それは京都府の人権条例について声をあげてきた皆さんの姿とも重なります。
点と点が繋がっていきます。
誰もが住み慣れた町で、好きな景色に囲まれて、安心して暮らしていく権利を最も蹂躙するものは戦争であることを思えば、京都の町での市民の皆さんの活動は人権の確立と住民自治の最前線。
皆さんの活動に参加しつつ、議員としてできることを探っていきたい。