議 会

2023.12.15

公共、コモン、指定管理

11月議会では山科の市営のジムだったラクト健康館の売却や、市営住宅の管理の民間委託など「公共か民間か」といった議案がいくつか出た。
昨年発行したNEKKOマガジンのテーマは「自治」で、当時はまだ区長ではなかった岸本聡子さんのインタビューなども掲載している。
ヨーロッパで、一旦民間に託された水道事業の最公営化についてお聞きしているもので、今読んでも示唆に富んでいる。
しかし。
私は今回、草の根プロジェクトの仲間に相談をしながら、指定管理の議案にはすべて賛成した。
議会に入って、考えが変節したのではなく、市政についての情報量が増える中で、そのような判断になった。
「公共か民間か」
ということについて考えをぐるぐる巡らせながら。
京都市は税収だけなく、いくつかの銀行から市債という形でお金を借り入れて運営されている。
何十年も利用するであろう公共の道路や橋などを作るのに、今現在の市民からの負担だけで賄うのは不公平だし無理なので、次の世代にも負担してもらうという意味で、市債という形でお金を借り入れて運営するという理屈である。
たとえば、道路を作るとして、それがどれだけ「公共の福祉」の増進につながっているかは、どこで誰がどんな基準で判断するのだろう?
公園予定地だった土地を売却することに決めたとする。
そのことによって「公共の福祉」がどの程度マイナスとなるかはどこで誰がどんな基準で判断するのだろう?
判断の役割は議会が担っている。
あと、学者さんや市民委員などで構成される審議会というのもある。
パブコメという手法で市民の声を聞いたりもする。
それらの判断の過程を経て、公共の福祉の増進という基準と照らし合わせて事業が進む、とされている。
一方。
水道事業も地下鉄・市バスの事業も現在は京都市(公共?)が担っていることになっているが、「地方公営企業法」というのがあり、それに則って経営されている。
以下、抜粋です。
(経営の基本原則)
第三条 地方公営企業は、常に企業の経済性を発揮するとともに、その本来の目的である公共の福祉を増進するように運営されなければならない。
(特別会計)
第十七条 地方公営企業の経理は、第二条第一項に掲げる事業ごとに特別会計を設けて行なうものとする。
つまり、
「市民からの税金などで構成される一般会計とは別の特別会計で経営しなさい。公共の福祉を増進しつつ独立採算でしっかり利益を出しなさい」
という法律である。
公営企業間のお金の貸し借りは認められているし、必要な時には一般会計からの繰出も認められているが、独立採算制の原則の中で、水道局・交通局は大変な努力をされている(私はまだほんの少しだけ知ったに過ぎない)。
公共か民間か、という判断をする際に、私は現在の京都市や公営企業の運営、銀行に少なからぬ利子を支払続けている運営について、果たして公共なのかどうか戸惑っている。
そんなことは当たり前のことだという風土の中で、自分自身も明快な答えがない。
資本主義社会の中にあって、公共とは一体なんだろう。
「公共か民間か」、という問いの前に、まず、「公共」とはなんだろう。
現在、市内の各所で地元市民と開発業者の間で問題になっているマンションやホテル建設計画は、私有地で起きている。
日照権やプライバシー権、景観条例と照らし合わせた時に、法律に抵触しない範囲での計画であっても、実際は1日の中で相当な時間が日陰になってしまう状況、風の通りを妨げられる状況、マンションから自宅を見下ろされる状況、景観を奪われる状況に対し、地元の方々がなんとか開発業者と折り合いをつけようとされるのだが、そこで行政が介入できる余地はとても少ない。
事業者が法令を遵守しているから。
京都市には「市民参加推進条例」というのがあるのだが、市民の声はなかなか届かない。
参加型民主主義、直接民主主義、というのは大事な視点。
「公共」の役割について、そしてそれを担う議会や行政へのチェック機能について、市民参加での議論が必要だと感じる。
先日、下鴨の数名の女性の方々からお声がけいただき、京都府に対し、植物園・北山エリア計画についての質問状を、府に対し提出する機会を得た。
その質問状は、この数年の府のこの問題に対する記者会見や議会での答弁を丁寧に詳かにされた上で、
「この時の判断は何に基づいていますか」
「この発言の際には、どこと相談をされたのですか」
「この決定は何を根拠にされたのですか」
という風に、事実に基づいて法律と照らし合わせて作成されている。
正確で揺るぎない素晴らしい質問状だ。
私は同行させていただいたに過ぎず、そして大変勉強させていただいた。
ニュースにならないたくさんの場で民主主義の実践がある。
京都府からの返事はまだ無い。