2020-06-16

6月19日20時〜/それいけ!ざつ談instaLIVE配信

一昨日の草の根プロジェクトのインスタライブ、

松平尚也さんをゲストにお迎えして、

ポストコロナの日本と世界のフードシステムについてお話を伺いました。

とても大切なことを伝えてくださっているのに、

こちらの準備不足で音声が聞き取りにくくて

聴いてくださった皆様にもお聞き苦しい思いをさせてしまいました。

コロナの中で、物流が止まったらどうなるのか?

一気に食糧危機がやってくるという危機感を持った方は多いと思います。

フードシステムという言葉を知っていても知らなくても、

私たちの日々のご飯は、このフードシステムというやつにしっかりと組み込まれているのですね。

その同じシステムの中で現実に8億人以上の人が飢餓状態にある。

驚くべき現状だと改めて思いました。

引き続き、発信をしていけたらと思います。

以下、抜粋です


 

井崎)今日、夕方のニュースで日本の農業を海外にアピールして

競争力をつけていくという記者会見されていたが、

松平さんのポストコロナの問題意識と真逆かと思うのですが、

今、どんな風に感じてらっしゃいますか。

 

松平さん)今、多くの農家がコロナで直接影響を受けています。

日本政府は食べ物の流通も農業の方針もコロナ以前に戻す考えですが、

本当にそれでいいのかと考えています。

海外では、これまでの食べ物と農業のあり方、

フードシステムを強く問い直す動きが出てきている中で、日本はそれが弱いなあと。

 

井)海外でのフードシステムの見直しという動きも

中々ニュースに取り上げられないのですが、

具体的にはどんな動きがありますか?

 

松)今、世界では食料貿易がすごく増えています。

作られた食料の4分の1が国境を超えている状況です。

その中で日本は、世界の穀物貿易の1割くらいを輸入しているんですね。

今回、コロナの中で、日本の輸入元であるアメリカやオーストラリアは

輸出を続けるということで日本は輸入できているのですが、

それはラッキーだったのかな、と思うんです。

世界の主な穀物の輸出先である

ウクライナやロシアなんかは輸出制限をしたのですが、

その輸出先はエジプトなどで日本ではなかったので、

今回日本は影響を受けなかったわけです。

 

井)海外が輸出を止めなかったので、

日本は今のところ食料が確保できているお話でしたでしょうか。

 

松)そうですね。今回、コロナで物流が止まるという心配、

これまで考えたこともなかったような心配が出てきたわけです。

特に大きいのが海運、船が流通するもののボリュームがとても大きいわけですが、

今回、船の労働者の皆さんにそこまでコロナが広がらなかったというのがあって、

なんとか持ちこたえている状況だったんですけれども、

ただ、船員の方たちがコロナ予防ということもあって

交代制の勤務をされているわけですけれども、

労働者の確保というのがまた問題になっていて、

海外に食べ物を頼るという怖さを今回、感じたかなと思っています。

 

井)地域によってはパスタや小麦粉がスーパーから消えたという話も聞きました。

物流が止まっちゃう、輸入がストップした時に一気に食料危機に陥るという

恐怖を現実的に感じました。野菜の種も不足したのでしょうか?

 

松)これは国連も警告しているんですけれども、

日本が輸入している穀物はオーストラリアとアメリカに頼っているんですけれども、

その大規模農業というのは大量の種と化学肥料を使うんですね。

それを運ぶ物流が必要になってくる。

物流がストップすると穀物を育てられないという状況を国連も警告しています。

日本もまさにそうで、野菜の種は、8割から9割が輸入です。

だからそれが止まると一気に生産基盤が壊れてしまうという状況です。

 

井)その中で今、種苗法改正、

今回は見送られましたが、国会で継続審議になっていますよね。

 

松)はい、次の国会で継続して審議されるといういうことになっています。

 

井)SNSではセンセーショナルに種取りしたら捕まっちゃうよ、

というような流れ方もしたかと思うのですが、

そんな極端なことではないにしても、

自分たちで種を継いで行こうという営みを

じわじわと規制しようという方向ではあるのですよね。

 

松)今回、種苗法の改正について、登録品種というものについて、

種子の開発者の権利を擁護するために、

この品種については種取りを制限しようというような内容で、

それ以外の一般品種というものに関しては今のところは自家採種は

オッケーということに改正後もなると言われています。

ただ問題はですね、農業関係者に情報が

十分にシェアされていないということがあります。

あと、ヨーロッパ等は主食の穀類に関しては

知的所有権から外していこうという動きなんですが、

日本は今、一気に規制していこうという動きになっているので、

市民社会と農業関係者から様々な疑問が出されたのは、

そういった一気に規制していこうという動きに対してですね。

 

井)3年くらい前から農水省で政策を

一本化していこうという動きがあるのかと思うのですが、

政策統括官でしたでしょうか、そんな役職もできているようで、

食料に関する政策提言を1本化しよう、そして国際競争力を高めていこう

というような動きがあるのかなと思うのですが、政策を決めていくときに、

農家さんや民間からの意見は聞いてくれている状況なのでしょうか、

それともトップダウンで決まっていっているのか、

そのあたりの印象はいかがでしょうか?

 

松)安倍政権になってから農業政策が新自由主義的に

なっているということがあって、アベコベ農政というんですが。

農家がやって欲しいと思っているような農政と

逆のことばかりやるというようなことが進んでいるんですね、

その根本的な原因は、官邸主導農政、

官邸が決めてどんどん進めていくというやり方ですね。

そしてそれを決めていくにあたって施政改革会議という、

ごく一部の数名の民間人が入って

「農業をこういう風に変えていこう」という意見を出して、

それがそのまま政策になってしまうという状況が続いています。

その象徴的な事例が種子法の廃止ですね、

2018年の4月に廃止されたんですけど、

これも国会でほとんど審議されずに決定してしまって、

これを言い始めたのが施政改革会議で、

一部の民間人の提言が農業政策に直結してしまう、

アベコベな政策がどんどん通ってしまうということになっているかと思います。

 

井)私たち市民は松平さんたちが

発信してくださって「こんなことが起きているんだ」

と知るのですが、知った時には国会にかかってしまっていて、

反対署名など、できることはやろうとするのですが、

どんどん決まってしまうというのが現状かな、と思うのです。

食料のことというのは命に直結するので、

自給率を上げていくという政策を出して欲しいとか、

農薬や化学肥料を使うことで土が疲弊して流失してしまい

それが気候危機の原因にもなっているという現実に対して、

大規模な農業だけではなくて、

小さな単位の家族農業をしっかりと支えて、

地域の食べ物は地域で賄っていくというような

政策をしてもらいたいと思うのですが、

そういう提言をしている市民団体や

運動は日本ではありますでしょうか?

 

松)そうですね、今回、コロナで国内でも

大規模流通が打撃を受けたということがあり、

給食や飲食店に出していた農家が非常に強い影響を受けたし、

また、輸出に力を注いできたやり方も打撃を受けました。

そんな中で、生産者と地域、地元を直接結ぶような

活動も増えてきていると思います。

フードサプライチェーンというんですが、地産地消ですね、

そういう取り組みがポツポツとまた出てきているのかなとは感じています。

ただ、国全体でまとまって何かアクションを

起こそうというような取り組みはまだないですね。

 

井)先の京都市長選挙の時に、

私たちは福山和人選対で、松平さんにもご協力いただいて、

「アグロエコロジー宣言」という形で、京都市の農業政策を、

小規模農家さんや新規就農者をしっかりと支えるということや、

自給率を高めるということや、

給食をオーガニックに移行していくというようなことを

掲げてのですが、残念ながら選挙では勝てなかった。

なかなか選挙でも勝てない中で、現政権が、

本当に一部の人の提言をもとにどんどん政策を

作っていってしまうという流れには危機感を抱いています。

そこをなんとか、流れを変えていかねばという気持ちです。

まずは京都市でまた松平さんにもご協力いただいて、

そんな動きを作っていけたらと思うのですが、

海外では、市民が活発に政策提言をされたりしているような活動がありますか?

 

松)特に欧米はまだ新型コロナの影響が完全に落ち着いていない中で、

食べ物のあり方自体を見直そうという動きが起きています。

フランスなどはスーパーではフランス産の

野菜を売らなければならないというようなことが決まったり、

国家が大きく介入して食料システムを

変えようという動きになってきているかと思います。

日本も自給率を上げるとは言っているのですが、

一方で輸入を続けたいとも言っている。

ただ、今回、農家として現場で実感したことは、

去年まで変えた農業資材がいきなり止まったんですね。

いきなり買えなくなった。改めて恐ろしさを感じたんですが。

例えば日本は米は自給していると言っていますが、

輸入農薬や化学肥料に頼っている今の米の作り方では、

お米の生産は4割は減るだろうと言われています。

今は、輸入に頼っている農薬や化学肥料がありきの自給率なんですね。

そういう大きなシステムの中に取り込まれている。

これまでも世界で毎年8億人が飢餓状態にあると言われているんですが、

それがコロナの影響でさらに1億から2億人

増えると国連が警告を出しているんですが、

その背景にあるのが食料を輸入できる国とできない国というのがあります。

世界には食の格差というのがあって、世界中の人が十分食べられるくらいの

食料が生産されているのも関わらず、飢える人が出てくる。

これは食料を輸入している国、日本も含めて、

輸入をすることでこの貿易を維持する、という枠組みがあって、

このシステムが食料格差を生んでしまっているんですね。

今回のコロナの教訓としては、

これまでの大規模輸入拡大路線の農業政策の対案として、

小さな家族農業と、地域ごとの消費者とのつながり、

小規模なそんな動きが改めて見直されていると感じています。

 

 


<松平尚也さんプロフィール>

農・食・地域の未来を視点に情報発信する農家ジャーナリスト。

京都市・京北地域の有機農家。

京都大学農学研究科に在籍し世界の持続可能な農や食について研究もする。

農場「耕し歌ふぁーむ」では地域の風土に育まれてきた伝統野菜を栽培、

セットにして宅配を行いレシピと一緒に食べ手に伝えている。

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