2019-01-23

「京都の水は大丈夫?水道法案可決成立」前編

ゲスト/辻谷貴文さん 全日本水道労働組合  書記次長

水道事業の現状「ヒト、モノ、カネ」全部が厳しい

これからの人口減少による減益と高度成長期に建設された設備が50年経ち激しい老朽化と、小さな政府を目指し地方公務員とくに水道の現場で働く職員がものすごいスピードで減らされ技術継承の難しさがある。

民営化への流れ

2011年末に第二次安倍政権が発足。311甚大な災害の後にPFI法を改正して公共サービス全体の民間運営をすすめた背景が民主党政権時代にあるが、市民の財産を投資の対象にする流れが竹中平蔵さん先頭に加速。2013年にCSIS(米戦略国際問題研究所)で麻生太郎副総理が「日本の水道を全部民営化します」と発言。2015年に厚労省は持続可能な水道事業のために基盤強化方策検討会という有識者会議を開いて検討。そのとりまとめには無かった運営権を民間に渡す「コンセッション」という問題が出てきた。2018年の通常国会でPFI法改正があり官から民への流れが強化された。大きな公共事業を行うときはまず民間活用を検討することを促し、もはや地方自治はだいぶゆがめられてきている。水道事業体も企業債の返済にかかる利子をコンセッションにしたら免除するなどというインセンティブで、民間路線に進める方向。

世界の水道事業民営化の現状再公営化へ

現在ほぼ100%再投資に回されている水道料金が、民営化されることで担保機能を持ち、グローバルファンドからもお金を借りられるようになり、返済の利子、役員報酬、株主配当、などコストがかかってくる。実際パリをはじめヨーロッパでは80年代に民営化した水道事業のサービス、料金、効率が悪化し、25年~30年の契約が終わるタイミングでどんどん再公営化に向かっている。契約途中で再公営化するととんでもない違約金を払わされるので、我慢している事業体も多い。ベルリンでは市民のお金で株式を買い戻した。イギリスではPFIを凍結して市民の手に取り戻すと公約した労働党が80数パーセントの支持を得ているという流れの中、日本は25年遅れで民営化に進もうとしている。

これからの動き

コンセッションをやると手を挙げた浜松市では先日市民の大きな反対集会があった。コンセッションの解釈もさまざまで、PFI法改正の中で企業債利子の免除があるというインセンティブ欲しさということがあるのでは?とも感じられる。民営か公営かという議論は意味をなさない。大事なのは自分たちが支払った公共財へのお金が100%再投資されること。蛇口の向こう側を想像すること。どこに水源があるのか、災害時はどうなるか?どんな人が働いているか?民営化されても働くのはそこの職員でユニフォーム着替えるだけ。労働条件悪くなるだけ、とならないか。しっかりと目を光らしてみること。

労働組合は、労働条件や働く場所を守りたいから公営がいいと主張しているのではなく、水道事業が市民の生活を影で支え地域の基盤になっているというプライドがある。直営の職員で技術を持っていて、その人なしに現場が回らないという方がたくさんいる。彼らが退職した後どうなるか考えて欲しい。しっかり水道事業やらんかい!と市民も発信・共有して欲しい。自分としては改正水道法が施行されるにあたり公営水道でやるんだ、という意気込みのある事業体については元気出るようなインセンティブが付くよう働きかけたい。社会の中できちんと機能する労働組合として頑張りたい。

 

ゲスト/山本奈美さん 京北 無農薬無化学肥料農家 耕し歌ファーム

水問題との出会い

20年ほど前にメキシコ留学し、サパティスタが武装蜂起した本拠地チアパスで水の問題に出会った。自然が豊かな深い森の中なのに水が汚染されているというので、先住民の人たちは赤ちゃんとゲストにコカコーラを渡していた。水は誰のもの?という疑問が芽生え、ピースボートの寄港地プログラムコーディネーターとして中南米各地で社会問題や環境問題に取り組む人びとを訪ねてきた。いかんともしがたい現実を少しでも好転するために自分ができることを探し、そのスキルを身につけるためとオランダの大学院で開発学を学ぶ。トランスナショナルインスティチュート/コーポレート・ヨーロッパ・オブザーバトリーの水プロジェクトでウォータージャスティス(公正な水)キャンペーンを担当、メキシコ水フォーラムで市民フォーラムに参加し、国際シンポジウムを主催するなどして、日本に帰ってから『世界の“水道民営化”の実態』という本を出版し、グローバル水問題にかかわってきた。英語の「private」には「奪う、私のものにする」っていう意味がある。「民営化」には「民(人びと)がみんなで担う」というイメージを与えがち。「私営化」と呼んだほうがしっくりくると思う。

世界の流れ 水道民営化から再公営化へ

辻谷さんが「25年遅れ」とおっしゃったが、世界の水問題はこの25年ほどどのように動いてきたのかをおさらいしたい。90年代、貧しい人に水を届けるためには民間を活用すべきだと、途上国各地で水道事業が民営化が推進された。公営は非効率だ、グローバル水企業なら効率的だ、という論理だった。しかしその結果は散々だった。企業は儲からないところに入って損したら困る。利潤が期待できないところには入らない。企業は株主に配当しないわけにはいかない。民営化されて企業は再投資よりも利潤追求にむかっていった。ボリビアのコチャバンバでは、人々は雨水を貯めて利用することすら「禁止」された。それがボリビアのコチャバンバ水戦争の発端だった。ラテンアメリカは特に、インターネットの普及にも伴いデモや集会が広がり、水運動が広がっていった。「水は売り物じゃない」「水はわたしたちのもの」がキーワード。世界各地の水道民営化事例を調査した研究機関は、「民営化すれば貧しい地域に安全な水を供給することができる」というのは幻想にすぎなかった、と断定するレポートも発表した。90年代から2000年代は、世界で広がる水の私営化に対して、人びとが水をどう取り戻すか、どういう水運営が望ましいのか、という議論が盛んになった時代だった。

転機は2010年のパリの水道事業の再公営化の事例かもしれない。パリの水道は1985年に民営化され、以来25年にわたってヴェオリア社とスエズ社がコンセッション契約のもと水道事業を担っていた。水道料金はあがったが、財政面の透明性がなく十分な情報が開示されなかった。再公営化して、即座に4000万ユーロ(約52億円)の支出を削減することができ、水道料金を8%引き下げた。株主配当や役員報酬などが要らなくなったからだ。それがひとつの革命となりパリ市の後につづく再公営化が進んでいる。

カタルーニャ州では、スエズの傘下アグバルという会社があり水道事業の半分は民間企業がになっている。水道料金は高くバルセロナはもっと高いが、経済危機の中払えない人も出てきている。その水道料金の半分以上が水道事業と関係ないところに支払われていたのが発覚し、コンセッション契約をやめる自治体が増え続けている。20万人の都市で約3000人が再公営化を支援するため「水の日」と名づけてお祭りのようなアーティスティックな楽しい集いを繰り広げた。

世界は再公営化の流れにある。英語では「Re-municipalizationといってちいさな自治体が、人びとの手に水を取り戻そうという動きが盛んになっている。ちなみにmunicipalizationの「muni」はラテン語で「コミュニティーの義務」、「cipal」は「手にする。権限をもらう」。コミュニティーをする権限をうけた人たちという意味。

 

参加の皆さんとat kazenone

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